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マンションの断熱性能の調べ方|施工後でも断熱材は入れられる?

マンションの購入を検討するときに、日当たりの良さや建物に欠陥がないかどうかは、多くの方がチェックするポイントでしょう。

しかし、「マンションは隙間風が入りにくいから冬でも暖かい」というイメージがあり、断熱性能については意外と見落としがちなのではないでしょうか。

そこで今回は

  • マンションでも断熱性能は必要なのか
  • マンションの断熱性能の調べ方
  • マンションの断熱性能が低いとどうなるのか
  • 施工後のマンションでも断熱材を入れられるのか

などについてお伝えします。

戸建てだけでなくマンションでも断熱性能が重要な理由がわかるので、マンションを購入しようと思っている方や、自分が住んでいるマンションの断熱性能が気になっている方はぜひ最後までご覧ください。

 

マンションでも断熱性能は必要?

マンションの写真

はじめに、戸建てだけでなくマンションにも断熱性能が必要な理由について解説します。

多くのマンションが鉄筋コンクリート造であるため、気密性が高く、冬場でも室内が暖かいというイメージを持たれている方も多いでしょう。

確かに鉄筋コンクリート造のマンションが気密性が高いのは事実ですが、コンクリート自体は断熱性が低い素材です

冷たい外気が吹き付ける冬はコンクリートが冷え、室内の気温が下がり、日差しが照りつける夏はコンクリートが熱されることで室温が上がってしまうのです。

そのため気密性が高いマンションであっても、断熱性能は重要だと言えます。

 

マンションの断熱性能の調べ方

断熱のイメージ

それでは自分が住む予定のマンションや、すでに住んでいるマンションの断熱性能がどのくらいなのかを調べる方法を解説します。

これから住む家で快適に過ごしたいと思っている方や、家の中にいると体が冷えやすいと感じている方は、これからお伝えする方法でチェックしてみてください。

 

1.設計住宅性能評価書を見てみる

1つ目が、「設計住宅性能評価書」または「建設住宅性能評価書」を確認することです。

「住宅の品質確保の推進等に関する法律(品確法)」では、さまざまな住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」を制定しています。

住宅性能表示制度を利用している物件なら、設計住宅性能評価書または建設住宅性能評価書が用意されており、マンションの性能や品質をチェックできます。

その中には断熱等性能等級が記されているため、そのマンションの断熱等級がいくつであるかを確かめてみましょう。

断熱等級が4以上であれば、建物の断熱性能は十分に備わっていると判断できます。

 

2.築年数をチェックする

2つ目が、マンションの築年数を確かめることです。

先ほどお伝えした住宅性能表示制度が2000年4月に施行されてからは、建設会社が建物の断熱性にも力を入れるようになりました

しかし、制度が開始される前は断熱性能はあまり意識されていなかったため、これより前に建てられたマンションは断熱性能が低いことが予想されます。そのため築20年以上経過しているマンションを購入する際は注意が必要です。

ただ築20年以上のマンションであっても、リノベーションにより一定の断熱性能を保っている物件もあるので、不動産会社などの売主に確認しておきましょう。

 

3.内断熱か外断熱か調べる

3つ目が、マンションが内断熱か外断熱であるかを確かめることです。

マンションで断熱工事を行う場合、鉄筋コンクリートの構造躯体に室内側から断熱材を設置する内断熱、躯体を包み込むように外側に断熱材を設置する外断熱に分かれます。

内断熱のマンションは外の空気や熱が構造部分にまで伝わりやすく、断熱性能が低くなってしまいます。

一方外断熱のマンションであれば、外壁と鉄筋コンクリートの間に断熱材が入っているため、熱や冷気をシャットアウトできます。

ただ、北海道などの寒冷地以外では内断熱が採用されていることが多く、外断熱のマンションは少ないのが現状です。

 

4.設計図を確認する

4つ目が、マンションの設計図を見てみることです。

マンションの設計図を見て断面図や、断面図をさらに詳しく描いている矩計図(かなばかりず)を元に、断熱材がきちんと設置されているかチェックしましょう。

図面であれば壁の内部の構造がどのようになっているかわかり、断熱材で覆われているかを確認できます。

設計図の見方がよくわからない場合は、施工業者に確認をするか、建築事務所に相談してみましょう。

 

5.目視で断熱材が入っているか確認する

5つ目が自分で建物の内部を見て、断熱材が設置されているか調べることです。

断熱材は天井裏や床下などに設置されるため、点検口からのぞいてみたり、床下に潜ったりして確かめます。

断熱材が取り付けられていなかったり、設置されていても破れたり隙間が空いていたりすると、断熱性能は不十分です。

ただし、自分で確認作業をするのは危険であり、正確に調べられない恐れがあるため、専門業者に検査を依頼することをおすすめいたします

 

6.ホームインスペクション(住宅診断)を依頼する

6つ目がホームインスペクションを依頼し、建物の断熱性を調べてもらうことです。

ホームインスペクター(住宅診断士)に建物の調査をしてもらえれば、設計図通りに断熱材が設置されているかや、厚みが十分であるか、きちんと施工がされているかを確認できます。

検査の段階で断熱性に問題があることが発覚し、売主に伝えて補修工事を行ってもらえれば、安心して新しいマンションで生活できるでしょう。

すでに住んでいるマンションの断熱性が低いと判断された場合は、リフォームによって性能を向上させることもできます。

イクスプランでは新築マンションの内覧の同行や、中古マンションのホームインスペクションを承っております

屋根裏や床下に断熱材が設置されているか、隙間ができていないかなど徹底的にお調べいたしますので、ぜひ当社へご相談ください。

 

マンションの断熱性能が低いとどうなる?

マンションのイメージ写真

続いてマンションの断熱性能が低いと、どのような影響があるのかを解説します。

マンションの断熱性能が低い場合に起こるデメリットは次の通りです。

  • 快適に過ごせない
  • 体調を悪化させる恐れがある
  • 光熱費が高くなる

マンションの断熱性能が低いと、冬場は部屋の中の気温が下がってしまい肌寒く感じ、夏場は室温が高くなり蒸し暑く感じるようになります

家の中にいても足先が冷たい、蒸し暑くてじっとり汗をかいてしまうといった不快感があるでしょう。

また、室温が低くなると体調面にも影響が出る危険性があります

室温が16℃を下まわると呼吸器系疾患を発症するリスクが高まり、10℃前後の場合は高血圧や心臓疾患のリスクが高まります。

さらに、寒い時期は部屋を温めようとして暖房を強め、暑い時期はなるべく冷やそうと冷房をきつくかけるようになるため、光熱費が高くなってしまいます

昨今では光熱費が高騰しているので、家計を圧迫する要因となるでしょう。

 

施工後のマンションでも断熱材を入れられる?

施工後のマンションのイメージ

断熱材は建物の内部に入れるため、「施工後のマンションは断熱材は入れられないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

すでに建築済みのマンションの場合、躯体の外側に断熱材を設置する外断熱を施そうとすると、建物全体を工事しなければいけません。

そのため部屋単位で断熱工事を行う場合は、部屋の内側から行う内断熱であれば可能です

次の章では、施工後のマンションに断熱材を入れる工事を行う方法についてお伝えします。

 

施工後のマンションに断熱材を入れる工事を行う方法

断熱材の写真

施工後のマンションに断熱材を入れる方法は次の2種類です。

  • 乾式断熱
  • 湿式断熱

それぞれの断熱工事の違いについて解説します。

 

乾式断熱

乾式断熱は、木材を固定して作った下地の間に発泡スチロール状の断熱板をはめ込む方法です。

乾式断熱は簡単に施工でき、コストも抑えられるのが特徴です

ただ板状のため複雑な形状だと貼り付けられず、断熱材の間に隙間ができやすくなってしまいます。

 

湿式断熱

湿式断熱は木材で下地を作り、その中に泡状の断熱材を吹き付ける方法です。

湿式断熱は泡状のためあらゆる形状に対応でき、隙間ができにくいのが特徴です

ただ難易度が高く、専門業者でないと対応できないため、業者を手配するのが難しい場合もあります。

また、断熱材の泡は大型コンプレッサーのホースを通って圧送するため、8階以上の部屋だと施工ができないのもデメリットです。

 

断熱材以外にマンションの断熱性能を高める方法

断熱のイメージ写真

断熱材以外にマンションの断熱性能を高める方法として、窓と玄関ドアのリフォームも効果的です

窓ガラスを2枚または3枚構造になっている複層ガラスや、熱を遮る遮熱複層ガラスに替えると、冷気や暖気が入り込みにくくなります

さらに断熱性の高い樹脂製サッシにすることで、より断熱性能を高められます。

また、玄関ドアも断熱性の高いものに取り替えると、隙間風が室内に入り込みにくくなります

ただ、マンションの管理規約で玄関ドアの交換を禁止している場合もあるため、その場合は新しいドアを既存のドアの上に取り付けるカバー工法を選んでみてください。

 

法改正により次世代省エネ基準適合が義務化

マンションのイメージ

最後に、法改正によりマンションを含む建造物の断熱性能が見直されることについて触れておきます。

今後日本の建物の断熱性能の基準が大きく変わるので、こちらもチェックしてください。

 

建築物省エネ法の改正により断熱性の基準が変更される

「建築物エネルギー消費性能向上に関する法律(建築物省エネ法)」が2022年6月に改正され、2025年4月以降に新築するすべての住宅等に、次世代省エネ性能基準の適合が義務化されました

次世代省エネ基準では、マンションを含む建造物は断熱等級4以上の性能を持つことが求められています。

また、これまで日本の住宅の断熱等級は1~4であったため、断熱等級4が最高等級でしたが、新たに断熱等級5~7が新設され、断熱等級4は最低等級となりました

このように日本の住宅の断熱性能の基準は大きな変化を迎えています。

 

断熱性能が低いと資産価値が下がる場合も

省エネ法の改正により建物の断熱性能が見直されたことで、今後断熱性能が低いマンションは資産価値が下がることが懸念されます。

次世代省エネ基準を満たしたマンションが次々と建設されれば、基準を満たしていないマンションは見劣りしてしまいます。

そうすると建物の価値が下がってしまい、売却するときには購入したときよりも安い金額でしか契約できない可能性もあるでしょう。

そのため、これからマンションを購入する場合は断熱性能が高い物件を選び、すでにマンションを購入した方は断熱リフォームをしておくことをおすすめいたします

 

マンションの断熱性能を調べるときはホームインスペクションを依頼しよう

イクスプラン代表がホームインスペクションを実施している画像

今回は、マンションの断熱性能の調べ方についてお伝えしました。

気密性が高い鉄筋コンクリートマンションは、耐熱性が高い素材ではないため、断熱効果を高める施工がされているかをチェックする必要があります。

イクスプランでは、中古マンションのホームインスペクションを承っております

普段見ることが無い床下や天井裏を検査し、断熱材がしっかり設置されているか、隙間ができていないかを点検いたします。

あわせて建物に重大なひび割れがないかや、雨漏りが起きていないか、設備に異常がないかも確認します。

検査で問題があった箇所を修繕すれば、快適かつ安心した生活を送ることができます。

マンションの断熱性や安全性が気になっている方は、ぜひ経験と実績が豊富な当社へご相談ください

 

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  • (株)EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所
  • 住所:〒814-0121福岡県福岡市城南区神松寺3-14-20-1013
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中嶋栄二 写真

記事監修:中嶋栄二
EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所代表。建築士でありながら住宅診断を行うなど、家にまつわる幅広いお悩みやご相談などに対応。年間100件以上の実績で皆様の住宅に関するお悩みを解決します。【資格等】一級建築士・耐震診断アドバイザー・住宅メンテナンス診断士・建物危険度判定士フラット35適合証明技術者など