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長期優良住宅を取り消したい場合は?メリット・デメリットも解説

国が定めた一定の基準を満たし、耐久性や耐震性、断熱性に優れている長期優良住宅

長期優良住宅に認定されると、減税措置を受けられるなどのメリットがあります。

しかし、長期優良住宅のデメリットを知り、申請後に取り消しを希望する方もいます。

そこで今回は

  • 長期優良住宅のメリット・デメリット
  • 長期優良住宅を取り消したい場合はどうすればいいか
  • 長期優良住宅を取り消すときの注意点

などについてお伝えします。

長期優良住宅の申請をするうえで知っておくべきことがわかるので、これからマイホームを建てる、購入する予定の方はぜひ最後までご覧ください。

長期優良住宅とは

長期優良物件イメージ

はじめに長期優良住宅について簡単に解説します。

長期優良住宅とは、国が定めた認定基準を満たし、長期にわたり良好に使用可能なことが認められた住宅のことです。

長期優良住宅の認定基準項目は下記の通りです。

  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 省エネルギー対策
  • 維持管理・更新の容易性
  • 居住環境
  • 住戸面積
  • 維持保全計画
  • 災害配慮基準

建物が劣化してきたときのことを想定し、建物の構造に合わせて措置が取られているかや、耐震基準または断熱等性能等級を満たしているか、維持管理の円滑な実施のための必要な措置が取られているかを判断します。

また地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容に適合することとされています。

なお床面積の合計が75㎡以上あるかや、構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分、給水・排水の設備について、仕様に応じた点検を10年以内の間隔で行い、必要に応じて補修等を行うこと、災害時に臨時点検を行い、維持保全の実施期間が30年以上であることと定められています。

さらに2022年2月からは、建物が建てられるエリアが以下の区域外であることも基準となりました。

  • 地すべり防止区域
  • 急傾斜地崩壊危険区域
  • 土砂災害特別警戒区域
  • 災害危険区域

長期優良住宅の認定を受けたい場合は、登録住宅性能評価機関に認定基準の適合証等の申請と建築確認申請をします。

適合証が発行されたら各都道府県や市区にある所管行政庁に認定申請をし、認定後に工事が開始されます。

長期優良住宅の6つのメリット

長期優良物件のメリットイメージ

次に、長期優良住宅の認定を受けた場合に得られるメリットについてお伝えします。

長期優良住宅のメリットは次の6つです。

  • 耐久性・耐震性が高い
  • 光熱費を抑えられる
  • 税制優遇を受けられる
  • 補助金を受けられるケースがある
  • 地震保険が割引される
  • 売却時に建物の価値をアピールできる

それでは1つずつ解説します。

1.耐久性・耐震性が高い

1つ目が、長期優良住宅の認定を受けた住宅は、耐久性や耐震性に優れていることです。

長期優良住宅と認められた建物は、床下や屋根裏に点検口が設置されているなど、劣化対策等級3の基準を満たしています。

また、新築住宅の場合は

  • 耐震等級等1で、限界耐力計算で安全限界変形 1/100(木造は 1/40)以下であること
  • 耐震等級2であること
  • 免震建築物であること

このいずれかを満たしています。

中古住宅の場合は耐震等級1、または免震建築物であるため、一定の耐震性が備わっています。

耐久性があるため築年数が経っても安心して住み続けられ、地震が発生したときにも慌てずに家の中で避難できます。

 

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2.光熱費を抑えられる

2つ目が長期優良住宅に認定された住宅は、一般的な住宅より電気代を抑えられることです。

長期優良住宅は、新築住宅の場合は断熱等性能等級4を、中古住宅の場合は断熱等性能等級4、または断熱等性能等級3かつ一次エネルギー消費量等級4であるため、断熱性能が高いのが特徴です。

そのため冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるので、クーラーや暖房機器の使用量を減らせます。

3.税制優遇を受けられる

3つ目が、長期優良住宅の認定を受けると、さまざまな税制優遇措置を活用できることです。

長期優良住宅であると認められれば、以下の税制優遇措置を受けられます。

  • 登録免許税の減税
  • 不動産取得税の減税
  • 住宅取得等資金贈与の非課税限度額の引き上げ
  • 固定資産税の減額措置の適用期間の延長

一般的な住宅の場合、登録免許税は税率が0.15%ですが、長期優良住宅の場合は税率が0.1%になります。

また一般的な住宅は不動産取得税の控除額が1,200万円までですが、長期優良住宅の場合は1,300万円まで控除を受けられます

さらに住宅を購入したときに親族から資金援助を受けた場合、一般住宅は500万円まで贈与税が非課税となりますが、優良住宅の場合は1,000万円まで非課税となります。

なお、新築住宅は建物の固定資産税が3年間2分の1になりますが、長期優良住宅であれば5年間減額措置を受けられます。

4.補助金を受けられるケースがある

4つ目が、長期優良住宅の認定を受けると、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金制度を活用できる場合があることです。

地域型住宅グリーン化事業とは、耐久性や省エネルギー性能に優れた木造住宅の推進をする事業のことです。

事業の採択を受けた中小工務店で木造住宅の長期優良住宅を建てると、最大110万円の補助金を受け取れます

5.地震保険が割引される

5つ目が、地震保険に加入する際に保険料の割引を受けられることです。

建物の免震性能や耐震性によって地震保険が割引されるため、保険料を抑えられます。

地震保険の場合は、耐震等級割引または免震建築物割引が適用されます。

6.売却時に建物の価値をアピールできる

6つ目が、長期優良住宅の認定を受けておくと、売却するときに購入希望者に建物の価値をアピールできることです。

長期優良住宅であれば耐久性や耐震性があり、定期的なメンテナンスが行われている証拠となるため、資産価値の向上につながります。

将来売却することも考えている場合は、長期優良住宅の申請を検討してみてください。

長期優良住宅の5つのデメリット

長期優良物件のデメリットイメージ

続いて、長期優良住宅の認定を受けることで起こりうるデメリットをお伝えします。

長期優良住宅のデメリットは次の5つです。

  • 定期点検とメンテナンスの実施・記録が必須になる
  • 建築コストが高額になるケースが多い
  • 申請してから認定を受けるまでに時間がかかる
  • 間取りに制約がある
  • 申請するのに費用がかかる

長期優良住宅のデメリットも知ったうえで、認定を受けるかどうか判断してみてください。

1.定期点検とメンテナンスの実施・記録が必須になる

1つ目が、長期優良住宅の認定を受けた住宅は、定期点検の実施と結果を記録する義務があることです。

長期優良住宅を建てる際は、30年後までの点検計画を記した「維持保全計画書」を作成します。

定期的に計画書に記載した通りに点検を行わなければならず、必要であれば修繕をする必要があります。

また点検やメンテナンス、増改築を行ったときにはすべて記録しておかなければいけません。

そのため家中を点検する手間がかかり、修繕が必要な場合は修繕費もかかるのがデメリットです。

なお、都道府県や市区町村から記録の提出を求められた際に、嘘の報告をしたり、

報告をしなかったりした場合は、30万円以下の罰金が課せられる場合があります。

2.建築コストが高額になるケースが多い

2つ目が、長期優良住宅の基準を満たした家を建てると、建築コストが高くなる場合があることです

建物の耐久性や耐震性、断熱性能を高めるとなると、グレードの高い部材や設備が必要になります。

そのため標準グレードの部材を使っている物件と比べると、コストがかかってしまいます。

ただ、性能が優れた部材を使った方が維持費やメンテナンス費を抑えられるため、長期的な目線で考えるとコストを抑えられるでしょう。

3.申請してから認定を受けるまでに時間がかかる

3つ目が、長期優良住宅の認定許可が下りるまでに時間がかかることです。

長期優良住宅を建てるには、登録住宅性能評価機関で適合証を交付してもらい、各都道府県や市区にある所管行政庁へ申請書などを提出し、認定を受けてからでないと建設できません。

そのため一般的な住宅と比べ、建物が完成するまでの期間が数週間〜1ヶ月ほど長くなる場合もあります。

その分スケジュールが遅れることも予想されるため、余裕を持って予定を組むと良いでしょう。

4.間取りに制約がある

4つ目が、長期優良住宅の基準を満たすには、ある程度間取りの制約を受けることです。

長期優良住宅の場合は耐震性などの一定基準を満たす必要があるため、壁や柱の数を必要な分だけ設置することが求められます。

そのため設計上この壁は撤去できない、柱はこの位置でないといけないなどの制限が出てきます。

その一方で構造がしっかりしているため、地震や台風などの災害に見舞われたときに建物のダメージを抑えられるメリットもあります。

5.申請するのに費用がかかる

5つ目が、長期優良住宅の申請をするのに費用がかかることです。

自分で長期優良住宅の申請をする場合は5〜6万円ほど、ハウスメーカーに申請をしてもらう場合は10万円〜30万円ほどかかります。

長期優良住宅の家を建てる際は、申請費用も予算に組み込んでおきましょう。

長期優良住宅を取り消したい場合はどうすればいい?

それでは、もし長期優良住宅の取り消しをしたいときに、どのような手続きをすればよいか解説します。

認定後に長期優良住宅の取り消しをしたい場合は、都道府県または市区町村に対して維持保全計画を取りやめる旨の申出書を提出します。

必要な申請書は各都道府県・市区町村によって異なるため、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。

長期優良住宅を取り消すときの注意点

注意点のイメージ写真

万が一長期優良住宅の取り消しをする場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 補助金の返金を求められる可能性がある
  • 減税を受けられなくなる

地域型住宅グリーン化事業などの補助金を利用していた場合、長期優良住宅の認定を取り消すことで、返金を求められる可能性があります。

また、登録免許税や不動産取得税、固定資産税などの減税を受けている場合も、取り消し申請をすることで元の税率に戻されてしまいます

こうした注意点もあることを考慮し、申請の取り消しをするかどうか慎重に判断しましょう。

長期優良住宅に限らず定期的な点検・メンテナンスは重要

ホームインスペクションをするイクスプラン代表中嶋

長期優良住宅の認定を受けると、定期的な点検やメンテナンスが義務付けられますが、長期優良住宅以外の建物も日頃から点検やメンテナンスを行うことが大切です

定期的に建物の点検を実施し、必要なときにメンテナンスをしておけば、劣化や災害によって大きなダメージを受けることを防げます。

建物の傷みがひどい場合は修繕費も高額になってしまいますが、少しずつ修繕をしていれば全体的なコストを抑えられます。

費用はかかりますが安全に過ごすためにも定期的な点検を行い、必要に応じてメンテナンスも依頼しましょう。

長期優良住宅を建てたら定期的にホームインスペクションを受けよう

住宅診断をするイクスプラン代表中嶋

今回は長期優良住宅の取り消しをしたい場合についてお伝えしました。

長期優良住宅に認定されると点検やメンテナンスが必須となりますが、日頃から建物の手入れを行うことで、長期的に安全な暮らしを維持できるメリットもあります。

イクスプランでは、ホームインスペクション(住宅診断)を承っております。

建物に重大な欠陥がないか、修繕が必要な箇所がないかを徹底的に調べます。

長期優良住宅の定期点検はご自身でも行えますが、建築のプロである建築士に検査を依頼することで正確な判断ができます。

自分で建物の点検ができるか不安に感じている、メンテナンスが必要な状況かどうかわからないという方は、ぜひ当社へご相談ください。

 

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中嶋栄二 写真

記事監修:中嶋栄二
EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所代表。建築士でありながら住宅診断を行うなど、家にまつわる幅広いお悩みやご相談などに対応。年間100件以上の実績で皆様の住宅に関するお悩みを解決します。【資格等】一級建築士・耐震診断アドバイザー・住宅メンテナンス診断士・建物危険度判定士フラット35適合証明技術者など