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アスベストの事前調査をしないとどうなる?調査の必要性について解説

耐久性や耐熱性に優れ、安価で手に入るため、建築物の屋根材や壁材、天井材に多く使われていたアスベスト

しかし、飛散したアスベストを吸い込むと肺がんなどになるリスクがあるとして、2006年9月1日以降アスベストの含有率0.1%を超える製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に禁止されました。

さらに2022年4月1日からは、アスベストの事前調査の義務化が決まりました

 

そこで今回は

  • アスベストの事前調査をしなかった場合に起こるリスク
  • 住宅にアスベストが使われていた場合は契約不適合責任になること
  • アスベスト調査を依頼する業者の選び方

 

などについてお伝えします。

アスベストの事前調査がなぜ必要なのかがわかるので、これから中古住宅を購入しようと思っている方はぜひ最後までご覧ください。

 

アスベスト(石綿)とは

アスベストの写真

はじめにアスベストについて解説します。

アスベストとは天然鉱物の1つで、石綿(いしわた)とも呼ばれます。

耐久性や耐熱性などが高く、安い価格で仕入れられることから、アスベストが含有されたセメントが屋根材や壁材、天井材に使われてきました。

ところがアスベストに発がん物質が含まれていることがわかり、長い時間吸い込むと体に害があるとされ、1975年にアスベストの吹き付け作業が禁止されました

その後2004年にアスベストの含有率0.1%を超える10品目の製造などが禁止され、2006年には製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されました

 

2022年4月1日からアスベストの事前調査が義務化

解体工事現場のイメージ

こうして段階的にアスベストの使用などが禁止されてきましたが、規制される前に建てられた建築物にはアスベストが含まれている危険性があり、今も物件の売買が行われています

これまでは「宅地建物取引業者が分譲、売買、媒介などをした物件に関し、アスベストの使用有無について状況把握に努めること。」としているだけで、アスベストに関する調査は義務ではありませんでした

しかし、アスベストによる健康被害問題や、アスベストを含む物件を販売した業者に対する契約問題、除去費用の負担をめぐる紛争などが後を絶たないため、2022年4月1日にアスベストの事前調査が義務化されました

これに伴い2022年4月からは個人宅の解体や改修工事について、改修対象の建材にアスベストが含まれているかどうか調査をし、労働基準監督署と市区町村へ報告することが義務となっています

 

アスベストの事前調査をしなかった場合に起こるリスク

アスベストの被害のイメージ

アスベストの事前調査の義務化についてお伝えしましたが、もし事前調査を行わなかった場合どのような問題があるのか見ていきましょう。

アスベストの事前調査をしなかった場合に起こるリスクは次の通りです。

  • 健康被害が起きる恐れがある
  • 解体作業中に飛散すると近隣にも悪影響が及ぶ
  • アスベスト除去に手間とコストがかかる
  • 業者選びの責任を問われる可能性もある

それではそれぞれ詳しくお伝えします。

 

1.健康被害が起きる恐れがある

1つ目が、建物にアスベストが含有されていることに気付かず、後になって健康問題が生じることです。

アスベストはとても細かい繊維であり、肉眼では飛散していることに気付きにくいため、知らないうちに吸い込んでしまう可能性があります。

アスベストを長い期間吸い続けるとがんなどの病気を発症するリスクがあるため、あらかじめ調査をしておくことが重要です。

 

アスベストが原因で発症する可能性のある病気について

アスベストが原因で発症する可能性のある病気は以下の通りです。

  • 石綿(アスベスト)肺
  • 肺がん
  • 悪性中皮腫
  • 良性石綿胸水
  • びまん性胸膜肥厚

 

肺の線維化が進み呼吸困難の症状が現れる石綿肺や、気管や気管支、肺胞の細胞に起きる肺がん、胸膜や腹膜、心膜、精巣鞘膜にできるがんである中皮腫などがあります。

また胸膜に炎症が生じ胸水がたまる良性石綿胸水や、胸膜が慢性的に炎症を起こすことで肥厚するびまん性胸膜肥厚なども挙げられます。

良性石綿胸水は胸水が無くなれば症状は収まりますが、呼吸機能障害が残る場合もあります。

びまん性胸膜肥厚は、呼吸困難や胸痛、呼吸器感染などを引き起こす恐れがあります。

 

2.解体作業中に飛散すると近隣にも悪影響が及ぶ

2つ目が、アスベストを含む建物を解体または改築する際に、周囲にアスベストが飛散し、近くに住む方々にも影響が出てしまうことです。

アスベストが含有されている建材が使われていると、建物を取り壊したり一部撤去をしたりするときに辺りに飛散してしまいます。

その飛び散ったアスベストを近隣に住む方々が吸い込むことで、健康被害を起こす危険性があります。

一旦アスベストが飛散してしまうと、自分たちだけでなく周囲の人々にも迷惑をかけることになるため、解体作業に入る前に調査を依頼しておきましょう。

 

3.アスベスト除去に手間とコストがかかる

3つ目が、アスベストを除去するのに面倒な手間と費用がかかることです。

アスベストの除去にかかる費用は次の表の通りです。

建物の面積 アスベスト除去費用
300㎡未満 20,000~85,000円/㎡
300㎡~1,000㎡ 15,000~45,000円/㎡
1,000㎡以上 10,000~30,000円/㎡

 

建物の面積が100㎡だった場合、アスベストを除去するのに200万円~600万円と高額な費用が必要となります。

また除去作業を行うときには、周囲に飛散しないようしっかりと囲いをしなければならず、通常の廃材のように産業廃棄物として出せないため、処分をするにも大変です。

このように後からアスベストを除去するには大きな負担がかかるので、事前調査でアスベストの有無をきちんと確かめておきましょう

 

4.依頼主自身が責任を問われる可能性もある

4つ目が、自分が購入した建物でアスベストの問題が起きた場合、依頼主の不備が問われる恐れがあることです。

大気汚染防止法によりアスベストの事前調査の報告を怠ると、30万円以下の罰金を科せられ、アスベスト除去などの措置義務に違反すると、3ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

本来であれば罰金や罰則が課せられるのは施工業者ですが、いい加減な業者を選んでしまって誤った報告をされた場合、発注者自身に不備が問われる可能性もあります

そのため、アスベストの事前調査が行われるのか施工業者の担当者に確認をするか、ご自身で別の業者に依頼することをおすすめいたします。

 

住宅にアスベストが使われていた場合は契約不適合責任に

アスベストの写真

アスベスト含有の建材が使われている建物を売買した場合は、売主に契約不適合責任が問われます

契約不適合責任とは、契約後に問題が見つかった場合、その責任を売主に課すことです。

自分が中古住宅を購入した買主であれば、売主に契約解除や賠償金の請求ができます。

一方、自分が住宅を売却する売主である場合は、買主とトラブルになったり多額の修繕費を請求されたりする恐れがあるため、事前にアスベスト調査を受けておくと安心です。

万が一アスベストを完全に除去するのが難しい場合は、契約書にアスベストの情報を記載しておけば、契約不適合責任を追及されずに済みます。

 

アスベスト調査を依頼する業者の選び方

住宅診断をするイクスプラン代表中嶋

ここからは、アスベスト調査を依頼する業者の選び方について解説します。

アスベスト調査を依頼する業者を選ぶ際は、次のポイントをチェックしてみてください。

  • 調査に必要な資格を保有しているか
  • 報告書を作成した実績があるか
  • 料金設定が適切か

 

調査に必要な資格を保有しているか

アスベストの事前調査を依頼するときには、建物などの解体や改築をする際にアスベストが含まれているか調査する「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持っている検査士がいるかどうか確認しましょう。

または、日本アスベスト調査診断協会に登録されている方も同様です。

2023年10月1日以降に有資格者の建築物のアスベスト事前調査が義務化されますが、現時点ではアスベスト調査の資格がなくても問題はありません。

しかし、有資格者が調査をした方が正確な判断ができますので、資格を取得済みである業者に依頼することをおすすめいたします。

 

報告書を作成した実績があるか

アスベストの事前調査を依頼する業者を選ぶ際は、アスベストの報告書を作成した実績があるかどうかを確認しましょう。

法改正により、アスベストの事前調査結果を記載した報告書を、行政に提出することが義務化されました

そのため、すでにアスベストの事前調査の報告書を作成したことがある調査業者だと安心です。

会社のホームページに報告書の作成実績が掲載されているかチェックし、掲載していない場合は担当者に問い合わせてみてください。

 

料金設定が適切か

アスベストの事前調査を依頼するときは、提示された料金もチェックしておきましょう

アスベストの調査が終わってから高額な調査費用を請求するケースもあるため、調査前に費用について確認しておくと良いでしょう。

また、追加料金が発生する場合はどのようなケースなのか、その場合いくらかかるのかも質問してみてください。

 

アスベストの事前調査の流れ

調査のイメージ

最後にアスベストの事前調査の流れをお伝えします。

アスベストの事前調査の主な流れは次の通りです。

  • 書面でチェックする
  • 現地に行って目視で確認する
  • 試料を採取して分析をする
  • 報告書を作成して建築物のアスベストの有無を報告する

 

まずは建造物に使われている材料や、工事が行われた日などを書面で確認します。

このとき使用されている資材にアスベストが含まれている可能性があるかも調べます。

書面での確認作業が終わったら、現地に行って書面と異なる部分がないか、アスベストが含まれている可能性がある資材が使われていないかどうか目視で確認していきます。

書面調査と現地調査を行ってみて判断しづらい場合は、材料を採取して分析調査を行います。

分析調査を終えて検査結果が出たら、事前調査の報告書を作成します。

アスベストの事前調査の報告書には下記の項目を記載します。

  • 工事の名称・概要
  • 建築物等の概要・構造
  • 作業の対象部分・事前調査の実施箇所

事前調査の結果は発注者にも報告することが義務付けられているため、報告書を作成したら書面で調査結果を伝えます。

 

アスベストの事前調査は経験・実績が豊富な業者に依頼しよう

ホームインスペクターイメージ

今回は、アスベストの事前調査の必要性についてお伝えしました。

アスベストの事前調査を行わず、気付かないうちにアスベストを吸い込み続けた場合、肺がんなどの病気を発症する恐れがあります。

後からアスベストを除去するとなると作業に手間がかかり、費用も高額になるため、事前に調査を依頼しておくことをおすすめいたします。

イクスプランではアスベストの事前調査を承っております

アスベストの事前調査に必要な資格を有するものが調査いたしますので、安心してお任せいただけます。

経験と実績が豊富な建築士がしっかり調査し、アスベストを含有している資材を使用していないか、アスベストの使用料が基準以下であるかを徹底的に検査いたします。

購入予定の中古物件にアスベストが使われていないか心配な方は、ぜひ当社へご相談ください。

 

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  • (株)EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所
  • 住所:〒814-0121福岡県福岡市城南区神松寺3-14-20-1013
  • Tel  092-862-8880

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中嶋栄二 写真

記事監修:中嶋栄二
EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所代表。建築士でありながら住宅診断を行うなど、家にまつわる幅広いお悩みやご相談などに対応。年間100件以上の実績で皆様の住宅に関するお悩みを解決します。【資格等】一級建築士・耐震診断アドバイザー・住宅メンテナンス診断士・建物危険度判定士フラット35適合証明技術者など