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自分が住んでいる家で「まっすぐ立っていると床が傾いているような気がする」「家具が傾いて見える」といったことはありませんか?
このような場合家が傾いている状態が気になり、リフォームを検討している方もいらっしゃるでしょう。
家の傾きを直す際は、工事を依頼する前にホームインスペクション(住宅診断)を受け、家の状態を調べておくことをおすすめします。
今回は
- リフォームをして家の傾きを直す方法と費用
- ホームインスペクションで分かる5つのこと
- ホームインスペクションの費用
などについてお伝えします。
家が傾いてしまう原因や、家が傾いている状態を放置するリスクについても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
リフォームをして家の傾きを直す方法と費用
早速リフォームをして家の傾きを直す方法と、それぞれの費用についてお伝えします。
建物に問題がある場合は、床を支える根太(ねだ)や床材を交換をし、家が建っている地盤に問題がある場合は、地盤改良工事を行います。
それでは、それぞれ詳しく解説します。
根太・床材を交換する
家が傾いている場合は、湿気や白アリが原因で、根太や床材が劣化または腐食しているケースがあります。
この場合は今ある根太や床材を撤去し、新しいものに取り替えることで対処できます。
床下の根太を取り外し、新しいものを取り付けるには、3~15万円ほどかかります。
床材を交換するには、6畳の部屋だと9~18万円、8畳の部屋は10~20万円ほどかかります。
なお、白アリが繁殖している場合は駆除も必要です。
白アリの駆除費用は1㎡あたり1,150〜3,000円が相場のため、30坪の住宅だと10万円ほどの費用がかかるでしょう。
地盤を改良する
地盤が弱い場合や、地震などの災害後に地盤がゆるくなってしまった場合は、地盤改良工事を行います。
地盤改良工事には次の工法が用いられます。
- 鋼管圧入工法
- 耐圧版工法
- 土台上げ工法
- 薬液注入工法
鋼管圧入工法
鋼管圧入工法とは、ジャッキを使って鋼で作られた管状の杭を地盤まで圧入させ、建物を水平な状態に保つ工事のことで、費用は400万円~500万円ほどです。
鋼管圧入工法は家の傾きが大きい場合にも対応でき、地盤沈下の改善もできます。
また、建物に住んでいる状態のまま工事ができ、騒音や振動が少ないのがメリットです。
ただ、工期が3週間以上と長く、他の工法よりもコストが高くなります。
耐圧版工法
耐圧版工法とは、浅く掘った穴に板を敷き、板の反発する力を利用して傾いた家を持ち上げて水平に直す工事のことで、費用は200~400万円ほどです。
耐圧版工法はある程度安定した土地で行われる方法で、家の傾きが大きい場合にも対応できます。
工期が短い場合で10日間ほどで、騒音や振動が少ないのがメリットです。
ただ、板を使って建物を持ち上げる工法のため、再度地盤沈下を起こしたときに家が傾いてしまう場合もあります。
土台上げ工法
土台上げ工法とは、ジャッキアップして家の基礎と土台を切り離し、土台を持ち上げて水平にしてから隙間に鉄板などを入れる工事のことで、費用は200~400万円ほどです。
土台上げ工法は傾きが10cm程度の場合に用いられ、安定した地盤で対応可能で、工期は10日程度です。
ただ耐圧版工法と同様に、地盤沈下を起こした場合は再度工事が必要になります。
薬液注入工法
薬液注入工法とは、注入管を通して薬液を地盤に注入する工事のことで、費用は250〜400万円ほど、工期は1〜3週間です。
薬液注入工法には「硬質ウレタン注入工法」と「グラウト注入工法」があります。
硬質ウレタン注入工法は、ベタ基礎の下に小さな穴を開け、ウレタン樹脂が膨張する力を利用して基礎を押し上げる方法です。
工期は短いですが5cmほどの傾きの場合しか使えず、再沈下する場合もあります。
グラウト注入工法は、ベタ基礎の下にセメント系の薬液を注入し、薬剤の体積と圧力で地盤を固め、土地を隆起させます。
5cmほどの傾きであれば対応でき、液状化した地盤を固める効果があります。
家が傾いてしまう原因について
次に、家が傾いてしまう原因についてお伝えします。
家が傾いてしまう原因は次の3つです。
- 地盤が弱いため
- 建物が劣化しているため
- 施工時に不備があったため
それではそれぞれ解説します。
地盤が弱いため
家が傾く原因として最も多いのが、建物が建っている土地の地盤が弱いことです。
川や海の近くは水分を多く含んでいるため、地盤が弱い傾向にあります。
また、地震や豪雨などの災害が起き、地下の水が噴出することで土が泥のようになる液状化現象が発生するケースもあります。
こうした地盤の弱い土地に建っている家は、土台がゆるいため建物が傾きやすくなってしまいます。
新しく家を建てる、あるいは購入をする場合は、不動産会社や施工会社に地盤調査の相談をし、地盤の強さを確認しておきましょう。
建物が劣化しているため
新築時は問題がなくても、経年劣化などにより建物が劣化して傾いてしまう場合もあります。
建物は時間が経つにつれて劣化が進み、柱や梁などの家の構造部分がもろくなってきてしまいます。
そうなると家の重さを支えられなくなり、建物が傾いてしまいます。
雨漏りを起こしていないか、白アリが繫殖していないか定期的にメンテナンスを行い、家が劣化してしまう前に対策をしておきましょう。
施工時に不備があったため
施工時のミスにより柱などの強度が十分でなく、家が傾いてしまうケースもあります。
設計書通りに施工がされていなかったり、留め具がきちんと留められていなかったりすると、建築後に家が傾く原因となります。
新築を建てた後にこうした欠陥が見つかった場合は、施工業者に工事のやり直しを依頼し、修繕をしてもらいましょう。
また、中古住宅を購入する場合は、自分が住む予定の家に欠陥がないか確認するために、入居前に第三者機関にホームインスペクションを依頼しておくことをおすすめします。
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家が傾いている状態を放置するリスクについて
続いて、家が傾いている状態を放置するリスクについてお伝えします。
家が傾いた状態で住み続けると、次のようなリスクがあります。
- 家が倒壊したり破損したりする危険性がある
- 健康に悪影響がある
- 生活面で不便が生じる
- 家の売却価格が下がる場合がある
それぞれのリスクについて解説しますので、傾いた家を直すべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。
家が倒壊したり破損したりする危険性がある
家が傾いた状態だと、建物がダメージを受けたときに倒壊したり破損したりする危険性があります。柱や壁がもろくなっていたり、土台が弱くなっていたりするため、大地震や台風が発生すると家がダメージに耐えきれず、倒壊や損壊してしまう危険性が高まります。
大けがにつながる恐れがあり、被害額も高額になるため、被害に遭う前にリフォームをして家の傾きを改善しておきましょう。
健康に悪影響がある
家が傾いた状態だと、平衡感覚が鈍ってしまい、体調に悪い影響が出る場合があります。
斜めになった建物で暮らし続けることによって、頭痛やめまいといった症状が出始めます。
こうした症状が続くと、食欲不振や睡眠障害を引き起こしやすくなり、生活に支障が出て来てしまいます。
健康的な生活を送るためにも、家の傾きに気付いたらなるべく早くリフォームすることをおすすめします。
生活面で不便が生じる
家が傾いているとドアや窓がきちんと閉まらなかったり、ドアが勝手に開閉したりと、生活面での問題も起きます。
建物が水平でないとドア枠や窓枠が歪んでしっかり閉められなくなり、鍵が閉められないため防犯面で問題が出てきます。
また、ドアが勝手に開いてしまうと室外の空気が入って来て、断熱性も下がってしまいます。
このように、家が傾いていると生活をしているなかで不便なことが増えてしまうため、修繕することをおすすめします。
家の売却価格が下がる場合がある
家が傾いてしまっていると欠陥住宅であると評価され、売却する際に相場よりも価格が下がる場合もあります。
家が傾いていることがマイナス評価を受け、そのままの状態で売却すると価値が下がってしまう恐れがあります。
家の傾きを直してから売却すると相場と同じ価格で契約できる可能性が高くなるため、事前にリフォームしてから売却することも検討してみてください。
ただ、地盤に問題がある場合は工事費が高額になるため、予算も含めて工事をするかどうか判断しましょう。
ホームインスペクションで分かる5つのこと
ここからは、傾いている家のホームインスペクションを実施することで分かることについてお伝えします。
傾いている家をプロに検査してもらうことで、次のことが分かります。
- 家の傾き具合がどの程度であるか
- 修繕費用にどのくらいかかるか
- 地盤と建物のどちらに問題があるか
- 家の欠陥部分について
- 耐震性に問題がないか
ホームインスペクションを受けるメリットについて解説しますので、リフォームをする前にまず検査を依頼することを検討してみてください。
1.家の傾き具合がどの程度であるか判断できる
1つ目が、ホームインスペクションをすることで家の傾き具合がどの程度であるか分かることです。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によると、家の傾きの許容範囲は新築住宅の場合は3/1,000以内(0.17度以内)、中古住宅の場合は6/1,000以内(0.34度以内)とされています。
ホームインスペクションを受けることで、家の傾きが許容範囲内であるかをきちんと計測してもらえるため、修繕すべきかどうか判断できます。
水平器やスマホアプリを使って自分で傾きを調べる方法もありますが、プロに一部屋ごとに計測してもらった方が正確な情報を得られるでしょう。
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2.修繕費用にどのくらいかかるか判断材料になる
2つ目が、ホームインスペクションで家の状態を調べてもらうことで、修繕費用にどのくらいかかるか判断しやすくなることです。
家のリフォームには多額の費用がかかるため、工事を依頼する前に工事費がいくらかかるのか把握しておくことが重要です。
検査をせずに工事が開始されると、追加で工事が必要な箇所が発見され、修繕費用がかさんでしまうケースもあります。
事前にホームインスペクションを受けておき、検査結果をリフォーム会社に渡しておけば、リフォームにいくらかかるのか見積もりを出すときの参考になります。
後から予想外の出費を支払わなくて済むよう、修繕が必要な箇所を明確にしておきましょう。
3.地盤と建物のどちらに問題があるか分かる
3つ目が、ホームインスペクションをすることで、地盤と建物のどちらに問題があるかが分かることです。
家が傾いている原因は、地盤と建物の両方が考えられるため、検査をしてみないと地盤に問題があるのか、建物に欠陥があるのかが判断できません。
検査をすればどちらに問題があるのかはっきりし、改修工事の計画を立てやすくなります。
家が傾いている原因は建物の欠陥に限らないため、地盤から工事をする必要があるのかきちんと調べてもらいましょう。
4.家の欠陥部分に気付ける
4つ目が、ホームインスペクションによって家のどこに欠陥があるかが分かることです。
ホームインスペクションでは建物を細かくチェックするため、ひび割れや雨漏りなどの欠陥を見つけることができます。
天井裏や床下も検査してもらえるため、普段生活しているときに気付けない欠陥に気付け、被害が出る前に対処できます。
建物の欠陥はプロに見てもらわないと気付けないことも多いので、ぜひ一度検査を依頼してみてください。
5.耐震性に問題がないかどうか分かる
5つ目が、ホームインスペクションと併せて耐震診断を受けることで、耐震性に問題がないか分かることです。
傾いている家は柱が劣化していたり、壁がひび割れたりしていて、耐震基準を満たしていない可能性があります。
ホームインスペクションを依頼するときに、耐震診断についても相談しておくと、地震が起きた際に自宅が強い揺れに耐えられるかどうか判断できます。
耐震性が弱いと、大きな地震が起きたときに欠損したり倒壊したりする危険性があるため、まとめて検査を受けておくことをおすすめします。
ホームインスペクションの費用について
最後に、ホームインスペクションの費用についてご紹介します。
一戸建ての場合、ホームインスペクションの費用は5~7万円が相場です。
ホームインスペクションを受けてから家の修理をする場合は、追加で費用がかかることを考慮しておきましょう。
なお、耐震診断の費用相場は5~30万円です。
ホームインスペクションと耐震診断を両方検査できるところであれば、まとめて依頼でき、検査費用を安くしてもらえる場合もあります。
イクスプランではホームインスペクションと耐震診断を承っていますので、ぜひご相談ください。
家の傾きを直すときはホームインスペクションを受けよう
今回は、家の傾きを直す方法とホームインスペクションについてお伝えしました。
家の傾きに気付いたときはホームインスペクションを受け、どこに問題があるかを調べてもらい、早急に修繕することをおすすめします。
イクスプランでは、中古住宅のホームインスペクションを承っております。
「既存住宅状況調査技術者」の資格を持つ建築士が検査をし、点検項目を1つ1つチェックいたします。
また、耐震診断もご依頼いただけるため、ご自宅の耐震性も併せて検査することが可能です。
家の傾きが気になっている方や、耐震性に不安がある方は、ぜひ当社へお問い合わせください。
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- (株)EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所
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- 記事監修:中嶋栄二
- EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所代表。建築士でありながら住宅診断を行うなど、家にまつわる幅広いお悩みやご相談などに対応。年間100件以上の実績で皆様の住宅に関するお悩みを解決します。【資格等】一級建築士・耐震診断アドバイザー・住宅メンテナンス診断士・建物危険度判定士フラット35適合証明技術者など