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自分や両親が住んでいる住宅の床が、軋んできたり外壁にひびが入ったりしていて、そろそろ家を建て替えるタイミングかもしれないと思っている方はいらっしゃいませんか。
しかし、「自分たちは高齢だし、今から新しく家を建て替えるのはもったいない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
あるいは「リフォームをするにしても修理費が高くなりそうだから、いっそのこと建て替えた方がいいのだろうか」と迷っている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は
- 高齢者が住宅の建て替えをするメリット・デメリット
- 高齢者が住宅を建て替えるか判断するポイント
などについてお伝えします。
高齢でも住宅を建て替えた方がよいのか迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
高齢者が住宅の建て替えをしたきっかけ
始めに、高齢の方が住宅の建て替えをしたきっかけについてご紹介します。
- 自宅が老朽化している
- 足腰が悪くなり住みづらくなった
- 子供が独立したのでコンパクトな家に建て替えたい
主に上記のようなことがきっかけで高齢になってから建て替えを検討する方が多くいらっしゃいます。次の章でさらに深掘りして解説します。
周りの方がどのようなきっかけで建て替えを決めたのかを知り、ご自身が建て替えを検討するときの参考にしてみてください。
自宅が老朽化している
今住んでいる自宅を建ててから年数が経ち、老朽化してきたため、思い切って建て替えを決めたというパターンです。
床がたわんできていつ抜けてしまうかと心配している、家の壁に大きなひびが入っていて、地震が起きたときに建物が崩れるのではないかと不安に感じ、一から家を作り直すことを決めたことがきっかけになった場合です。
家の建て替えをすれば耐久性を向上できるので、安心して暮らし続けることができます。
足腰が悪くなり住みづらくなった
若い頃は問題なく暮らしていたけれど、高齢になって足腰が弱くなってから生活しにくくなったことが建て替えのきっかけになったパターンです。
階段の上り下りが大変になった、段差につまづきやすくなり、ケガをしないか不安を感じるなど、身体の衰えと共に生活環境を変えた方がよいと思い、建て替えをした場合です。
平屋に建て替えたりバリアフリー化することで、足腰が悪くなっても安全に暮らせるようになります。
子供が独立したのでコンパクトな家に住み替えたい
子供がいたので部屋数を多くしたけれど、子供たちが巣立って夫婦だけになったため、コンパクトな家に建て替えたいというパターンです。
子供たちがそれぞれ別の場所で生活しており、子供部屋が空き部屋になっていて、使う予定がなく掃除をする手間もかかるので、部屋数を減らしたいという場合です。
コンパクトな家に建て替えれば、家の中を移動する距離が短くなり、掃除にかかる時間を短縮でき、足腰への負担を軽減できます。
高齢者が住宅の建て替えをするメリット
次に、高齢者が住宅の建て替えをするメリットについて解説します。
自宅を建て替えるかどうか迷っている方は、建て替えることで得られるメリットを踏まえて検討してみてください。
住みやすいように間取りや設備を変えられる
自宅を建て替えるメリットは、自分たちが暮らしやすいように間取りや設備を変えられることです。
子供たちと一緒に暮らしていた頃は部屋数が必要だったけれど、今は最低限あれば十分だという場合は、部屋数を減らして広くすることも可能です。
また、足腰が悪くなって立ち上がりにくくなったので浴槽の幅を広くしたいなど、家の中の設備を取り替えることもできます。
建て替えであれば間取りを自由に変えられ、新しい設備を入れられるため、心地良く暮らせるようになります。
耐震性・耐熱性を向上できる
建て替えの場合は一から新しく建て直し、基礎部分や構造部分も新しく作るので耐震性・耐熱性を向上できます。
リフォームの場合は既存の建物を再利用するため、基礎や柱、梁はそのまま使用します。
そのため基礎や構造部分が劣化していた場合は、耐震性が低下しており、大きな地震が起きた際に建物が被害を受ける危険性があります。
建て替えの際は古い基礎を取り壊し、新しく基礎を土台にして構造部分を作り上げていくので、耐震性も高められます。
また、壁を作る際に断熱材を入れられるため、寒い時期は冷気をシャットアウトし、暑い時期は熱気を逃すことができます。
そのため、冬は暖かく夏場は涼しく暮らすことができ、1年中快適に過ごせます。
同じ場所に住み続けられる
建て替えをすれば同じ土地に住み続けられるのもメリットです。
家が老朽化して別の場所へ住み替えをする場合は、知らない場所で生活を始めることになります。
いきなり新しい土地へ引っ越すと、顔なじみがいないため孤独を感じやすく、生活環境が変わるため、買い物や病院へ行くのに戸惑うこともあるでしょう。
一方、家を建て替える場合は同じ場所で生活できるため、近所の人と会話をしたり、行き慣れたお店や病院に通える安心感があります。
高齢者が住宅の建て替えをするデメリット
続いて、高齢の方が住宅の建て替えをするデメリットについて解説します。
高齢になってから住宅の建て替えをするデメリットについて知り、建て替えをするかどうか判断してみてください。
工事費用が高額になる
建て替えの場合は家を一から建てるため、施工費用が高くなります。
高齢になると退職をしている方も多く、多額の工事費用の支払いが負担になってしまう場合もあります。
建て替えをする際は、工事にどのくらい費用がかかるのか施工を依頼する建築会社に見積もりを出してもらい、貯金に余裕があるか確かめてから依頼しましょう。
仮住まいが必要になる
建て替えの場合は、既存の住宅を取り壊すため、工事をしている間は仮住まいが必要です。
高齢になると引っ越し作業が大変で、慣れないところで暮らすと不便を感じる場面も多いでしょう。
また、仮住まいをするアパートやマンションを探す手間がかかり、賃料が発生するのもデメリットです。
高齢なためどれくらい住み続けられるかわからない
高齢になると病気にかかったり、ケガをして寝たきり状態になったりするリスクがあるため、建て替えをしても長く住めない可能性があります。
せっかくお金をかけて新居を建てても、数年しか住めないのではもったいないという方は、劣化した部分のみを直すリフォームがおすすめです。
また、自分たちが住まなくなったら子供たちに資産として残したいという場合は、建て替えをして住みやすい状態にしておくとよいでしょう。
高齢者が住宅を建て替えるか判断するポイント
ここからは、高齢者が住宅を建て替えるかどうか判断するポイントについて解説します。
自宅を建て替えるべきか決められないときは、これからお伝えするポイントを元に判断してみてください。
築年数がどれくらい経っているか
住宅を建て替えるかどうか迷ったときは、築年数を参考にしましょう。
家の築年数によってわかるのが、新耐震基準または旧耐震基準に沿って建てられた建物であるかどうかです。
新耐震基準とは、1981年6月1日に改正された建築基準法によって新たに設けられた耐震基準のことです。
改正後に建築確認された建物は、新耐震基準を満たしていると見なされ、震度6以上の地震にも耐えられると想定されています。
改正以前に建てられた建物は旧耐震基準が適用されているため、震度6以上の大きな地震に耐えられない恐れがあります。
そのため、1981年5月以前に建てられた建物の場合は、耐震性が低い可能性があるため、建て替えをして基礎から作り直すことをおすすめします。
建物の劣化が進んでいるかどうか
建て替えをするか決める際は、建物の劣化具合によって判断しましょう。
建物の基礎や構造部分が白アリの被害を受けていたり、腐食していたりする場合は、耐久性が落ちているため、新しく建て直した方が安全です。
また劣化が進んでいると、リフォームをすると修繕費用が高額になってしまい、建て替えと同じくらいか、建て替えるよりも費用がかかるケースもあります。
建物の劣化具合を調べる際は、ホームインスペクション(住宅診断)を行える資格を持つホームインスペクター(住宅診断士)が在籍する建築事務所に依頼しましょう。
お問い合わせ・ご相談はこちら
- (株)EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所
- 住所:〒814-0121福岡県福岡市城南区神松寺3-14-20-1013
- Tel 092-862-8880
金銭面である程度余裕があるか
建て替えをするか判断する際は、工事をしても生活費が残るほど貯金に余裕があるかどうか確認しておきましょう。
建て替えをする場合は、既存の住宅の解体費用の相場が1坪あたり4~8万円、本体工事は1坪50~70万円ほどです。
また、住宅を建て直す際は下記の諸費用も発生します。
- 印紙代
- 登記費用
- 火災保険料
- 住宅ローン手数料
契約書に添付する印紙代や、家の所有者を登録する際の登記費用、住宅ローンを借り入れる場合は手数料が発生するので、こうした諸経費も含めて計算しましょう。
高齢者が住宅を建て替えるときのポイント
続いて、高齢者が住宅を建て替えるときのポイントについて解説します。
年齢に合わせて住宅の仕様を変え、生活しやすいよう工夫してみてください。
安全性を考慮する
高齢になると足腰が衰えることにより、座ったり立ち上がったりするのに苦労し、転倒するリスクも高まるため、安全面に配慮しましょう。
住宅内で必要な対策の目安は「高齢者等配慮対策等級」を参考にしてみてください。
参考URL:一般社会法人;住宅性能評価・表示協会
高齢者等配慮対策等級では、移動時の安全性に関して下記の点に配慮するよう明示しています。
- 垂直(上下)移動の負担の軽減
- 水平移動の負担の軽減
- 脱衣、入浴などの姿勢変化の負担の軽減
- 転落事故の防止
段差を無くす、階段やトイレ、浴室に手すりをつけるなど、安全に暮らせる環境を整えましょう。
部屋の動線を考える
高齢になると歩行が困難になる可能性もあるため、できるだけ動きやすい動線になるよう間取りを考えるとよいでしょう。
玄関からリビング、トイレ、浴室、寝室にそれぞれ移動しやすいよう間取りを決め、家の中を行き来しやすいよう工夫してみてください。
特に夜中にトイレに行く回数が増えてくるため、寝室の近くにトイレを設置すると便利です。
出入り口や設備の幅を広く取る
将来車椅子を使ったり介助をしてもらったりすることも考慮し、出入り口やトイレや浴室の幅を広く取っておきましょう。
出入り口は800mm以上、トイレと浴室も同じであり800m以上の幅があると、、車椅子でも通りやすく、介助者がいても動きやすくなります。
この数値の根拠は、車いすの幅から来ており、車椅子のJIS規格の幅は700mmとなっています。
また、トイレについては入口の幅だけでなく、介助が必要であれば室の内法を1400mm以上とします。
その他、建て替えなどで可能であれば廊下の幅も900mm以上で計画するとよいでしょう。
もしも、キッチンを利用する人が車椅子利用者であるなら、横移動よりも回転移動がしやすいという車椅子の特性に合わせてI型ではなくL型やコの字型のキッチンをおすすめします。
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高齢者が住宅を建て替えるときに利用できる制度について
最後に、高齢者が住宅を建て替えるときに利用できる、補助金や制度についてお伝えします。
家の建て替えには多額の費用がかかるので、これからお伝えする制度を利用し、金銭的な負担を減らしてみてください。
建て替えで利用できる補助金や制度
建て替えで利用できる補助金・制度は下記の通りです。
- 高齢者住宅改修費用助成制度
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金
介護認定で「要支援」または「要介護1~5」と認定されている方は、限度額20万円まで工事費の9割が介護保険から支給される「高齢者住宅改修費用助成制度」を利用できます。
また、工事費用の3分の1を国が補助する「長期優良住宅リフォーム推進事業」の補助金を利用できれば、最大100万円、3世代同居住宅なら最大150万円の補助が受けられます。
ただ、補助を受けるにはホームインスペクションを受け、住宅の構造や床面積、耐震基準などの条件をクリアする必要があるため、あらかじめ依頼をしておきましょう。
また、バリアフリーに対応した住宅を新築する場合は、国からの支援以外に各自治体の補助金制度もチェックしましょう。
高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」
住宅ローンを借り入れる予定の方は、60歳以上の方向けの住宅ローン「リ・バース60」の利用も検討してみてください。
リ・バース60は、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供している住宅ローンです。
リ・バース60はローンの利息のみを返済するため、元金と利息を毎月返済しなければならない通常の住宅ローンと比べ負担が少ないのが特徴です。
また、相続人に残債の返済義務がない「ノンリコース型」か、残債の返済義務がある「リコース型」のどちらかを選択できます。
参考URL:リ・バース60 住宅金融支援機構
住宅を建て替えるときはホームインスペクションを依頼しよう
今回は、高齢者の住宅の建て替えについてお伝えしました。
高齢の方が住む住宅を建て替えるかどうか迷ったときは、まずホームインスペクションを受け、家の状態を調べてみてください。
イクスプランでは、中古住宅の住宅診断を行える「既存住宅状況調査技術者」の資格を持つ建築士が検査を行います。
屋根裏や床下など、普段目につかない箇所もきちんと検査するため、建物の安全性をしっかりチェックできます。
実績豊富な建築士が作業にあたりますので、住宅の建て替えを検討している方は、ぜひ当社へご相談ください。
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- Tel 092-862-8880
- 記事監修:中嶋栄二
- EQSPLAN(イクスプラン)一級建築士事務所代表。建築士でありながら住宅診断を行うなど、家にまつわる幅広いお悩みやご相談などに対応。年間100件以上の実績で皆様の住宅に関するお悩みを解決します。【資格等】一級建築士・耐震診断アドバイザー・住宅メンテナンス診断士・建物危険度判定士フラット35適合証明技術者など